被災地域へのボランティアについて、土木業に従事する従兄弟から意見を求められた。あまりの惨状に居ても立ってもいられなくなり、今すぐにでも重機を引っ提げて、同業の仲間と一緒に現地へ赴くつもりであるとのことだった。
私は「気持ちは痛いほど分かるし、きっと土木技術は役立つことだろう。でも、もう少し待った方がいい」と彼を説得した。というのも、東日本大震災の発生から3日以上経過したが、今はまだ人命救助や被害把握の段階であり、現状ではそうした善意は義捐金で表現するのがベストだと思うからだ。彼は思い止まり、頃合を待つそうである。
救助活動は警察・消防・自衛隊等の専門機関が担っており、少なくとも素人ボランティアの仕事ではない。ボランティアが本当に必要とされるのは、いざ復興に向かう時である。被災地の市町村がボランティアの受け入れ態勢を整えてからでも決して遅くはない。その時が来るまで意志を忘れないことだ。
※どうしても個人的にボランティアとして被災地に向かうのならば、最低限、移動手段と衣食住は全て自分で確保しなくてはならない。自称ボランティアが被災地の限られた物資を食い散らかしては本末転倒もいいところだ。1〜2日のボランティア体験ツアーなら最初から自粛すべきである。
また、何らかの救援物資を送るにしても、余りある善意が逆に被災地を押し潰してしまうケースもある(第二の災害と言われる)。必要な場所に必要な物資を必要なだけ供給することは、現地の事情をよほど詳しく把握していなければ難しいため、善意だけで物資を送ることは控えるべきである。
そうは言っても、被災者の方々の心情を推し量ると胸が締め付けられ、何か自分に出来ることはないか考えさせられる。そして、せいぜい募金や献血ぐらいしか出来ないことに気付き、言いようのない無力感を感じてしまうのが事実だ。それでも、ただただ無力感に打ちひしがれるだけでは何も生まれない。こんな事態だからこそ、(募金や献血などの)自分に出来ることをした後は普段通りに振る舞うのも大切ではないだろうか。独善的なヒーローよりも良識あるエキストラでありたい。